みどりの日記念 フェ風 これの回答です。 「そう、それが結婚式ね。」 海はドヤ顔でそう告げると、ムフと鼻息を荒くした。 無表情のまま、海の話に聞き入っていたランティスは、その表情のまま光に視線を映す。 大きな瞳をキラキラと輝かせながら、同じように海の話を聞いていた光はコクコクと大きく頭を上下に振って、同意を示した。 好きな人とずっと一緒にいる約束。 光はランティスにそう告げたが、(結婚)という単語が具体的にどうするものかランティスにはよくわからない。 セフィーロ唯一の魔法剣士の頭脳を持ってしても理解できない事態は、共に結婚したいと告げたられた(イーグル)には決して聞かせたい話では無かったが、ついうっかりと口に出してしまう失態を犯してしまった。 当然、光の口から聞かされた言葉であることにイーグルも鋭い食いつきを見せ、こうして日光浴兼お茶会へと出向いた三人娘に質問の言葉を送ったのだ。 将来の夢は(お嫁さん)と公言してはばからない海は、結婚式にも並々ならぬ想いがあり、乞われるままに語ってみせた。アスコットがいれば、やんやの喝采を送ったかも知れないが、生憎彼は仕事で欠席しており、聞きたかったと後悔するに違いない熱弁ぶりだ。 『ああ、それなら僕の国でも似た風習はありますね。』 「そうなの?」 首を傾げた海に、イーグルはええと返事をした。 『パートナー制度と言って優秀な人材を残す為に特定の相手を選び契約を結ぶんですよ。』 「それは、どちらかと言うと結婚よりもお見合いに近いのではないでしょうか?」 話を聞いていた風が頬に指先を当てて、首を傾げる。 「そうね、契約と式は違うかも?」 う〜んと唇を結ぶ海に、光も小首を傾げた。 「オートザムではそれに指輪の交換とかするのかな?」 『指輪ですか? 装飾品を意中の相手に贈る事はありますが、それは指輪に限った事ではありませんね。』 「じゃあ違うのかも。 私、親戚の結婚式のお手伝いした事があって、交換する指輪を運んだの。ケーキカットと一緒で絶対にする事なんだって。 私、フワフワしたワンピースを着てお花と一緒に渡したんだ。」 (それは可愛らしかったでしょう。)と眠っているのに、蕩けるような声のイーグルにランティスは眉間の皺を増やす。何か気の利いた言葉を探した後に、ぼそりと言葉を紡ぐ。 「俺も見てみたかった。」 「えへへ、ありがとう。」 ふっくらとした頬を朱に染めて、光が微笑む。 「その結婚で交わすのが指輪なのはどうしてなんだ?」 興味深そうに話しを聞いていたフェリオが問い掛けると、海と光は再び首を傾げた。 「そうですわね。指輪である意味は無いかもしれません。 首輪や杖などもありますから、イーグルさんの仰る装飾品を贈るが元々の由来なのかもしれませんわね。」 ただ、と風は言葉を続ける。 「こちらにもあるかも知れませんが、身体の部位に意味を当てはめていたのかもしれませんわ。 例えば、指輪を人差し指にはめれば「大胆」、中指にはめると「分別」、薬指なら「愛情」、小指にはめると「傲慢」と言われておりますわ。」 風は自分の右手の指を示してニコリと笑う。彼女の右手の中指にはめられた金の指輪にフェリオが(ああ)と声を上げた。 「どうか致しましたか?」 「うん、ちょっとリングを貸してくれるか?」 「ええ。」 そもそも、そのリングが彼から貰ったもの。何か気になる事があったのだろうかと、差し出された掌に指輪を置くと、フェリオは席を立ち風の足元に跪いた。 ええ?と驚く光と海を尻目に、フェリオは膝に置かれた風の左手を取った。 「中指にリングをはめているのは、お前らしいが俺としては薬指にして欲しいな。」 自然な仕草で、指先を軽く絡めて薬指の付け根に軽く口づけを落とした。そうして、ほっそりとした風の指に金色のリングを通す。 涼しい顔で一連の動作をこなしたフェリオと違い、風は飲んだ息が吐き出せない様子で頬を真っ赤にして硬直している。 「…っ、フェリオ。」 「悪い悪い、我慢出来なくて、驚かせたか?」 悪戯が成功したように笑うフェリオに、風は染まった頬をぷくりと膨らませた。 「驚きました、が、あの、それも、あるのですが、」 風は左手の薬指にはめ直された指輪に目を伏せる。 キラと輝る金色が、フェリオの瞳のように見えて直視することが出来ない。 「嫌だったら戻してくれ、俺は自分のしたいことをしただけだからな。」 「そんなことは、」 もう一度、視界に薬指を入れてから、風は首を横に振る。 「…このままでいいですわ。」 「ありがとう、フウ。」 受け入れられている事を喜び、顔を綻ばせるフェリオに風の心境は複雑だ。 「何も知らないくせに、ちゃっかり左手の薬指にはめちゃうあたり…王子様よねぇ。」 呆れたように呟く海に、イーグルが(何がですか?)と問いかける。 「だって、あの指は(結婚の約束)をする指なのよ。」 ふわぁと光の口が開く。 「そうそう、キスにも意味があるのよね、風。」 「海さん…!フェリオには絶対教えませんから。」 頬を艶やかに染めぷいとそっぽを向いた親友に、海も光もふふと微笑んだ。 久しぶりに書けて楽しかったです(笑 content/ |