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indications of put an end 偽物か…用心深い奴め…。」 アッシュの衿を探って取りだしたチップの中身を確認し、男達が吐き捨てた。 ピオニーがすり替えたとは欠片も気付いていない様子に、安堵の溜息が出た。ほんの僅かかもしれないが、もう暫く時間が稼げる。 劇場から余り離れていない倉庫。木箱が高く積み上げられ、一種の迷路になっている。ピオニーは胸元にアッシュを抱しめた状態で、木箱を背に座り周囲を囲まれていた。 男達の様子から目を離さずに、ピオニーは震えている子供を抱き締めている腕に力を込める。恐怖に泣き出す事もなく靜に耐えている賢い子供のお陰で、まだふたりとも特別に暴行をされてはいなかった。 助けてやりたい、せめてこの子だけは。そう思う。 「こいつらはどうする?」 「子供はファブレのガキだ。いざという時には、身代金も取れるし、人質にもなる。」 アッシュは自分の事を言われているのだと知って、ぶるりと身体を震るわせる。守るように、抱き締められている腕が深くなり、アッシュはなんとか叫びだす事だけは堪えた。 「じゃあ、こいつは?」 「大人は邪魔だ。顔も見られてる、殺せ。」 ピオニーの腕のなかで、アッシュの身体は大きく跳ねた。殺す?こいつを? 見上げた視線に、しかしピオニーは揺るがなかった。澄んだ蒼穹は微笑んでいるようにも見える。 「最後まで、希望を捨てるなよ。」 見上げる翡翠にそう告げ、ピオニーの腕はアッシュの顔を胸板に押し付けるように背中に回した腕に力を込める。 「な…屑っ…。」 反抗するように見上げた視線の先、男の頭に押し付けられている拳銃に息を飲む。 叫び出そうとしたアッシュの後頭部にやんわりと掌を置かれ、見るなと告げるように、もう一度胸板に抱き込まれた。 トクトクと鳴る心臓の音が、アッシュの耳に確かに聞こえて、涙が溢れる。 「や、だ…ぁ!!!ルーク!!眼鏡!!」 嗚咽と共に吐き出された叫びと触れあう金属音が響いたのは、ほぼ同時だった。 → content/ |