静寂の中に響く雨音


 真っ暗な部屋で、考え事をしていた。
そういう時はとり止めが無い。自分自身の姿が見えないせいかただ不安がつのる。
同じような事がぐるぐると巡る。そうやってそれは、たいてい自分自身に対する不安だ。
過去も未来も自分とは無関係な気がして、ただ足が動かなくなる。
「ロディ…。」
そっと背中から腕が回された。
彼女の柔らかな手は自分の胸元で合わされる。
「雨が降っているのですね。」
「うん。」
「音だけ聞こえますね…。」
「うん。」
「何も見えなくても、確かに雨がふっている事がおわかりになるように、私の手を感じて頂く事できますか?」
ロディは、自分の手をセシリアのそれに重ねる。
「セシリアの…手だ。」
「私の手に重なっているのは、ロディのもの…ですわ。」
お互いの存在を確かめ合うように、二人は動かない。
響くのはただ雨音だけ



〜fin



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