手に入らないなら


 こじんまりした宿屋で向かい合って食事をとった。

 アリスはサンドイッチとペリエ。俺は山ほどの料理。
 こ汚ねぇ食堂のわりには味はいい。
 もぐもぐと食べていると、アリスがクスリと笑う。

「何だよ?」

 きょんとした顔をしていると、手にしたコップを置いてアリスは俺に手を伸ばす。
「付いてますよ。」
 アリスの指がそっと俺の唇の端をなぞった。
「小さな子供みたいですね。」
 指の先を俺に見せる。先に付いたケチャップ。

 そう言えば、母さんにそんな事してもらった事があったっけ。
 やさしく微笑むアリスは、聖母だよな〜なんて思っていると、彼女は、そのままそれを口に含んだ。

 ペロリと可愛い舌がそれを舐めとる

 背筋がぞくり。…ねぇねぇアリスちゃん誘ってるの?聖母だなんて俺様、即前言撤回。
 なんて思ったけど「疲れたので先に休ませていただきますわね。」とつれなく退室。

 アリスちゃん。そりゃないよ。

『手に入らないなら、取り合えず間接キッスで我慢しとくか。』

 ウルは彼女が飲んでいたペリエを飲みほした。

〜Fin




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