逸らした瞳


雨宿りの屋根の下。
隣でアリスが両手で肩を抱いて、震えているのが見えた。

うわっ結構ぬれちゃってるもんな。寒いよな。
スカート短いし、細い足もあんなに濡れちゃってるし
なんか暖かくしてあげたほうがいいんだよな。っても俺何にも浮かばないよ!?


俺ってホント莫迦。


気付いた時には、アリスちゃんをコートの中に抱き込んでた。
「寒いからね!」なんて、気取ったけど俺の声震えているじゃんか!?


でも、怒るかななんて思ったアリスは、自分の顔を見上げて頬を染めて微笑む。
「ありがとう。ウル」 自分の名前を形どる薄くて淡い色の唇をこんな間近で見てしまった。
ドキドキする。バクバク言ってる。触れてみてぇ〜って心臓が鳴る。


ああ、くっだらない何かの本に書いてあったっけ、『キスは食べる前の味見である…なんて』


ウルは頬を赤くしてフイと視線を逸らした。


『これ以上見ていたら、俺本当にアリスちゃんを喰っちゃうよ。』

〜Fin



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