white dayの情景[WA3 WAF]


WA3 「これなに?」
 差し出された蓋の開いた桃缶。丁寧にスプーンが付いている。
 ポンとヴァージニアの手の上に置かれる。
「桃缶。」
 無表情なジェットの顔。
「わかってるけど。なんで桃缶?。」
「俺が食ってるのを見てて、欲しいと言い出したのはお前だ。」
 えええ?と頭の上に浮かべながらジェットの顔を見る。
「だからって、ホワイトデーにまで桃缶…」
「…あのな、バレンタインにお前は俺に何かくれたのか?」
 ハッと気づき、じっとりと汗を流すヴァージニア。
 気まずい沈黙が二人の間、というよりはヴァージニアの心中に溢れ出す。
 涙目になりながら、少年を見上げたヴァージニアはごめんと小さく呟いてから言葉を続けた。
「………忘れてた…。怒ってる?」
はあと少年は溜息をついた。
「怒ってねぇ。いいから、黙って桃缶食え。」
「うん。」

 とりあえずは…a feeling of happiness


WA[F]
 アーデルハイド城の厨房で男が三人。
 オーブンの中なら、焼き上がったクッキーを取り出したロディをしげしげと見つめ、ザックは関心したように言う。
「はぁ〜!お前、意外と上手だな。」
「じっちゃんと二人暮らしだったからね。一通りの事は出来るよ。」
 慣れた手つきで鉄板からクッキーを外すと、丁寧に小箱に詰めていく。
 かなりの数のある小箱は、ロディの人気を示しているのだろう。
「なんか、にちゃにちゃしてて手にくっつくぞ!!」
 遠くで響くゼットの叫び声を聞き流しザックは、溜息をついた。
 そして自分で抱えているボールの大きさの倍になったメレンゲをうんざりしながら見つめた。
「どうしよ…これ。」
 ひょっとすると、ケーキになるはずのモノ(なのか?)を両手で抱えて途方にくれる。ロディは全て包み終えると、情けない顔のザックを振り返った。 「これを配り終わったら手伝ってあげるから、ちょっと待っててよ。」
「いいのか。」
 一条の希望の光を見出し瞳を輝かせたザックに、しかしロディはトドメの一言を忘れない。
「でも、秘密の花園とか色々行かなきゃいけないから少し遅くなるかも。」
 にっこり笑って厨房を出ていったロディに、ザックは涙を禁じ得ない。
「少しじゃないだろう…。それって…。」
「うおおおおおお!?これはトラップか!?」
「うっせぇぞ。ゼット…てか、クッキー生地がなんでねちゃねちゃするんだよ。は!!何やッてんだよ!?」
 袋から小麦粉をばさばさ振りまいているゼットを見て、ザックは顔色を変えた。
「ばかやろうそんなに、粉を振りまいたら粉塵爆発す…。」
「おおう!!爆発したぁあああ!!」
「この莫迦ぁぁ!!!」

…a series of misfortunes.?


〜fin



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