happy end [WA3] There is no change in the situation. でも、全ては変っていくものだ。 たとえば、荒廃していたファルガイアのあちこちに草花が咲き始めていること。 たとえば、私達の冤罪が晴れて、お尋ね者ではなくなった事。 たとえば、ただ生意気だと思っていたチームメイトが優しい事。 ヴァージニアは、ふっと目を覚ました。 魔物と闘った際に、傷口に毒が入っていた事に気付かず、宿屋に入ってから熱を出して倒れたのだ。誰かが、ずっと側についていてくれた…。その誰かもベッドの側においてあった、フルーツでその誰かが判別出来た。 『もも』の缶詰の中味。 危なっかしくて放っておけない。そう思っていた銀髪の少年。でも、この頃は違う。背も高くなって、視線は上がり、逞しく感じる。 いつも突起していた行動も控えめになり、寧ろ背中を守られている気がする。 旅を見守ってくれていた父のように、力強く、しかしさりげなく。そして、側にいると安心出来る。 『これは…まさか…。』 思いついた答えにいてもたってもいられず、ヴァージニアは、ベッドから跳ね起きると、部屋を飛び出した。 どどどっと階段を駆け下り、酒場で食事をとっていた三人のチームメイトの処まで駆け降りる。 「ジェット!!」 「ああ?」うざったそうに、ジェットが顔を上げる。人差し指をジェットにつきつけてヴァージニアは宣言した。 「貴方は私が記憶を再構築した時に、私好みに作り替えたジェットね!!!」 「…言いたい事はそれだけか…。」 ジェットはむっつりと答えて、腕組みをしたままヴァージニアを睨んだ。 『徹夜で看病してやったのに、何を言いだすんだこの女は。高熱で脳がやられたか…。』 「あの…リーダー…?。」 苦笑いをしながらギャロウズが話し掛ける。 「俺達は、分解も解体も消去もされてなかったような気がするんだけど…。」 向かいに座ってARMの手入れをしていたクライヴも、手で眼鏡を持ち上げながら言う。 「それに、ジェットはリーダーの好みなんですか?」 確信をついた台詞にヴァージニアとジェットの顔が真赤に染まった。 「ば…お前が変な事言い出すから、変な事になるんじゃないか。…まったく、うんざりだぜ。」 大きな音を立てて、扉を開け宿屋を出たジェットの後をヴァージニアが慌てて追いかけた。 「待ってよ!ジェット!あ、あのね…だから!!その!!看病してくれたお礼を…!!」 二人の後ろ姿を見送りながら、年長二人は笑い合った。 「『ハッピーエンド』にはまだまだだな。」 「そのようですね。」 There is no change in the situation.= 形勢に変化がないの意味。 〜fin
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