彼が無口な訳[WA.F] 始まりは、おかずに味が無かった事だ。調味料はゼットの横にある。 「…。」 「輝く軌跡を描きつつ!澄んだ空さえ駆け巡る。おちゃの間のアイドル!世界が待ってた俺様に向けるその熱い視線感じたぜボーイ!」 早口にまくしたてたゼットに、しかしロディは無言。なんと言ってもゲーム中一言も会話を交わさなかった間柄だ。(それは違うゾν) 「何が軌跡よ!アンタな生きてることが奇跡でしょ!」 すっくと立ち上がったカラミティジェーンはビシッとゼットを指差して言う。 「何〜!俺様の奇跡はてめえら凡才には無縁の煌めき、顔を洗って出直してこい!小娘だと思って、見合い中に『幾つ?』と聞かれて『二十です。』と答えそのまま砂糖を入れられたカフェのように甘い顔をしていれば!」(んな奴もいないν) 「たとえに切れもコクも無いアンタこそ甘すぎよ。空気を読んで出直しすべきね。」 「俺様はいつでも受信中だ!」(何を?携帯か?) 向かい側から三人を眺めていたザックがセシリアに耳打ちする。 「ロディとゼットって●カとゲ●みたいだと思わねぇか?」 「じゃあ、ジェーンさんはア●ュレ●さんと言う事でしょうか?」 「そこ!伏せ字の意味がまったく無いわよ!」 「俺様はいつも孤独なアイドルだ!馴れ合う二人コントと一緒にするんじゃねぇ!」 論点がずれて取り残されたロディは、誰にもとって貰えそうにない調味料に手を伸ばす。しかし、それはヒョイと持ち上げられる。 「やっだ〜間違えてかけちゃた。これ嫌いだわ〜。」 持っていった上にたべもせず、エマはそれごとゴミ箱に捨てた。 ロディは無言で、後に残された味の無いおかずをモクモクと口に運んだ。 一部始終を見ていたハンペンは、自分用の林檎をサクリとかじりながらこう思った。 『この環境じゃあ寡黙になるなって方が難しいかもね…。』 〜fin
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