※注意 ちょっとR18です。(フェ風でお前…)
駄目!って方は、読まないで下さい。












たった一度すれ違っただけで、恋は始まるものだろうか


 吐息が熱い。
 胸元、鎖骨の少し上にフェリオの息が掛かる。吸うのが短く吐くのが長いアンバランスな呼吸は、けれども火傷をしてしまうかと思うほどに熱かった。
 
「あっ…フェ…」
 ペロリと其処を舐めあげられて、思わず声が出る。甘酸っぱいものが胸に広がって、もどかしい指先がシーツを手繰る。
「フウ…フウ。」
 熱に浮かされて、勿論有り得ない熱に浮かされているには違いないが、フェリオの口から零れる自分の名前も、熱い。
 じんわりと身体中に広がる熱。高鳴る鼓動に、目尻まで熱くなるのがわかる。触れ合う肌もまた、ただ熱くて。
 思考の全てを放棄した風の頭は、だたひとつの名前を唇に上らせる。

「フェリオ、…フェ…リオ。」

 それが恥ずかしくて、口元に引き寄せる己の指をフェリオはそっと掠め取る。指先に接吻を落として、代わりに風に唇に差し出されるのはフェリオの指先だった。
 男にしては、細くて綺麗な指先が風の唇をゆっくりと撫でる。
「噛むなら…俺のでいい…。」
 はっと吐息を吐き出して、微笑む。
 普段なら背中に一纏めになっている髪が解かれ、汗で肩に貼り付いている様子が余り感じる事のない『男としての身体』を風に感じさせた。
 ドクリと胸が高鳴れば、繋がる身体はそれをフェリオに余すところなく伝えるのだろう。息を詰め、眉間に皺を寄せる表情が彼の熱をまた煽ったのがわかった。

 
 たった一度すれ違っただけで、恋は始まるものだろうかと、そう思っていた。
 有名なシェークスピアの歌劇『ロミオとジュリエット』だって、激しい恋に落ちたのは、たった一度、舞踏会で顔を逢わせた時だけ。
 顔を見ただけで好きになったりするものだろうかと、首を傾げていたのも確かに自分だった。物語の中でだけ存在する状況。そんなものだろうと思っていた。

 なのに、たった一夜。この地球=レイアース=に降り立ったセフィーロの男性に恋をした。自分だけならある程度有り得るものなのかもしれない。
 けれど、フェリオもまた、自分に恋をしてくれた。
異世界の壁を、己の力で越えて来てくれるほどの強い想いを持って、自分を求めてくれた。その事が、涙が出る程に嬉しく、そして愛おしい。

 風は、差し出されて指に接吻して、シーツを手繰っていた両手をフェリオの背中に回す。細くて、けれども引き締まった背中は、ただ熱い。
 揺れたフェリオの身体に触発され、風は彼の背に流れる髪に指を絡めた。
密着した胸が激しい鼓動を違いに伝えて、しっとりとした肌に気恥ずかしさを感じた。
「…貴方を傷つけるなんて、出来ません。」
 吐息に混じった風の声に、フェリオはクスリと笑った。
「俺が、こんなにお前を傷つけているのに…か?」
 耳元に囁く声に、後頭部に腕を回され抱き寄せられているのがわかった。
 優しいフェリオの指先が、髪を梳いてゆく。頬が触れる。彼を感じていない部分を探す方が難しいほどに、ふたりは触れ合う。
「フウが綺麗すぎて、…いつも、俺が汚している気がして…でも、フウが欲しい。」
「…綺麗と言って頂けるのは、とても、嬉しいで…すわ。」
 息が上がり声が続かないけれど、風は言葉を紡ぐ。
「汚されているとも思いません…でも…。貴方、から与えられるものなら、誰にも渡したくない。」

 おかしいですか?

 金の糸を頬に纏い、笑みを浮かべる。
愛おしいと、確かに思うのに。しどけない風の姿に涙がこみ上げてくるのを、フェリオもおかしく思う。衝動とは違う物が、胸を締め付ける。

「愛してる。」

 どんな言葉でも届かない気がして、けれどそれ以外言葉が見つからなくて、フェリオは溺れる前に接吻と共に彼女に贈った。


〜Fin



お題配布:確かに恋だった


content/