雨宿り


その時私は落ち込んでいた。
学校での友人との些細な出来事。
少しだけの諍い。気持ちの問題だから、直ぐに解決するようなものではない。
しばらくの間は、この問題と付き合っていかなければならない。
理性ではそう理解しているはずなのに、思い返すと涙が出そうになる。
ずっとこころのなかに黒雲を飼っているようで、本気の笑顔になれない。

「風ちゃん元気ないの?」
そう聞いてきた光にはいいえと笑顔で答えても、胸の支えは取れることも出来なくて。

でも、セフィーロに着いた時、私の名を呼ぶ声が聞こえた。
「フウ!」
側に来て、私の手を握り嬉しそうに微笑む貴方の笑顔を見ていると、自然に笑顔になっている自分に気がつく。酷い雨から守ってくれる屋根のように。
いつまでも、その下にはいられない、明日、また学校では胸が支えるような思いになるのかもしれないけれど。今なら、きっと頑張れる。
貴方の笑顔は、今の私にとっては何より大切な雨宿り。


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