監禁


遠くで彼女を呼ぶ声がする。

セフィーロも夕暮れ。彼女達の世界に帰る為に、風を探しているところなのだろう。
幸い…と言っていいのか、彼女はまだ気付いていなかった。
自分と同じ太い枝に並んで腰掛け、夕暮れの景色に見とれている。
落ちないようにと幹に置かれた白い手も夕日に染まっている。

この綺麗な横顔も、優しい眼差しも、柔らかな髪も、再び手を触れることの出来ない異世界へ帰っていってしまう。

幹に添えられた手には自分の手を重ねて彼女に顔の横に縫いつけて、そしてもう片方には自分の手をつき、その間に閉じこめた。

「フェリオ?」
彼女の翡翠の瞳に、邪な自分の顔が写る。
俺の邪心に彼女は気付かない。
再度、自分の名前を呼ぶ唇をそっと塞いだ。

彼女には愛しさだけが伝わるように。
本当は、友人達の呼び掛けに答えられないように。少しでも長く彼女が此処にいるように。

下らないほど子供じみた独占欲。


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