貴方に愛の祝福を<


書類の山に埋もれている彼を見つけた時は、はっきり言って苦笑した。
「随分すごい量ですわね。」
いつも付けているマントもかなぐり捨てて、腕まくりの末、床に胡坐をかいて座っている。
あたり一面の紙は、風の足を置く場所すらない。遠くにいるフェリオを眺めながら、足の置き場を探しながら彼の元に近付いた。
「調べ物をしていたんだが、もうこうなると何がなんだか。」
「何をお探しですか?」
「この近くの地図なんだが、これよりもうちょっと細かなところまで描いてあったものがあるはずなんだ。」
そう言うとフェリオは、片手に持っていた紙を風に見せた。
「明日の会議に恰好の資料だと思ったんだが…ただのウロ覚えだったか…。」
しばらく思案顔をしていたが、再度発掘作業を開始する。
「ありそうですか?」
「わからん…が諦めるのは性に合わない。」
「…では、私もお手伝い致しますわね。」
文字を読むことは出来ないが、図柄なら自分にもわかる。彼らしい台詞に微笑みながら風もその場所に座り込んだ。
背中あわせに書類の山から一部を抜き出し一枚一枚眺めながら別の場所へ置く。

かなりの時間そうしていたが、風は手にした紙をフェリオに示す。
「これではありませんか?」
それを見つけたフェリオの目が大きく見開かれ、パッと笑顔に変わる。
「それだ!でかしたぞフウ!やっぱりフウは俺の女神様だな。」
満面の笑顔になったフェリオに、風はクスリと笑って書類を手渡した。
「では、貴方に祝福を差し上げますわ。」


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