kissの間


東京は夏で、ジリジリとした陽ざしが肌に暑い。
だから、汗で滲んだ肌が触れると頭の感覚以上に身体が反応してしまう。
電車のなかで肩が触れ合うと不快な汗を感じた。

そして、コンビニでお釣りをもらう時もそう。
手のひらに小銭を乗せられた時の感覚が妙に生々しくて、失礼だったとは思うのだけれどすぐに手を引いた。

なのに…。

「フウ」

そう呼ばれて、手を引かれた。 言い訳をすれば、確かにセフィーロは気候が良い。快適な環境だと言っても良い。

でも、それを言うのならコンビニの中でも、エアコンの効いた環境なら温度はきっと変わらない。なのに一度汗を感じた肌は、触れる事に嫌悪を感じてしまう。

だから、その腕に抱き込まれて、こうやって唇を重ねれば、その体温に暑さを感じてもいいのではないか…とも思う。

思うけれども思考のなかに浮かびもしない。
「何か考えてただろ?」

唇だけが離れて、フェリオが風の顔を覗き込む。悪戯な笑顔に、風の頬が赤くなった。でも、その次に聞いた言葉で彼が勘違いをしている事に気が付く。

「俺の事だけ考えてくれ。」

再度重なったkissの間

貴方以外の事が考えられるはずがないのに。


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