※ランティス+イーグル+フェ風


夢見る辛さを知りました


 セフィーロはポカポカの陽気。そして、魔法騎士達がやって来た。
仕事も早めに終わったし、遠出はせずに気分の良いところで話しでもしようかと思い立ったフェリオは、風を中庭に誘う。
 風も模試とか言う大変な代物が終わってのんびり過ごすのが良いと同意した。
二人でまったり過ごせるのが良いな、などと妄想に浸っていれば、男がふたり争う声がする。
 
「どうしたんだ?」

 フェリオは、目をパチパチとさせて樹の根っこに座り込んで牽制するランティスと何か被せようとしているイーグルに声を掛ける。
 眉間に皺を寄せるランティスはままの表情をフェリオに向けた。
「係わるな。」
 短く告げて、イーグルを追っ払う事に全力を尽くす。
「酷いですね〜ちょっとだけですから〜。」
 ぐいぐいと笑顔で押し付けるイーグルは、ランティスの頭に何か被せたいようだった。よくよく見れば、オートザム製のヘッドレスト。なにをそんなに嫌がるのだろうか?
 フェリオが小首を傾げるのを見て、ランティスは眉間の皺を増やした。
どうやらフェリオを係わらせたくないようだと察した風が、彼を此処から連れ出す前に、イーグルは標的を変更する。
「オートザムのマシンなんですよ、これ。」
 風に向かって差し出されたヘッドレス。機械好きな風は思わず興味を引かれる。
「オートザムの…何をするものでしょうか?」
「夢見る機械です。ザスが造ってくれたんですよ、ふふスゴイでしょう?」
「夢?」
 風につられて、フェリオも話しに引き込まれる。
「ほら、僕が病気で眠っていた時、それでも話し掛ける事が出来たでしょう?
 そこから思いついて、眠っている相手にこちらからアプローチ出来る機械を創って貰ったんですよ。
 勿論セフィーロ限定ですけどね。」
「それは、随分と面白い思いつきですわ。」 
「そうそう、面白いと思うでしょ?」
 にこにこと笑みを崩さないイーグルは、風の掌にヘッドレスを置いた。
「今日はヒカルが来られない日なので、ランティスに(せめて)そういう夢を見せて逢わせてあげようと思ったのに、理解して貰えずに残念です。」
 ランティスムッツリと不機嫌が様相でイーグルを睨み付けている。
「ヒカルがいなくて寂しいのはお前もだろう。だったらお前が試せ。」
「そうしたいのは山々ですが、そうすると機械を操作する人間がいなくなってしまうので、泣く泣く諦めますよ。」
 
 嘘を吐け。

 ランティスの碧色が胡散臭いと睨み付ける。
けれど、そんな事にめげるイーグルではない。にこにこと人好きのする笑顔を見せながら、風に被せる機会を伺った。
 機械の調整をしつつ、彼女を誘う。
「フウさん試してみませんか?」
「私ですか? 何だか怖いですわ。」
「確かに僕が創ったらすごく怖いですけど、ザス作なのでそこのところは安心してください。」
 巧みな言葉で相手を誘いながら、機械を操作する。
「そうですわね。」
 頬に手を当てて思案顔になった風に、フェリオは慌てて横槍を入れた。
「待て、待て。変な機械にフウを誘うな!」
「じゃあ、フェリオが試してくれるんですね。貴方こそ、ザスの技術を疑ったりしないでしょう?」
 にっこりと微笑むイーグルに填められた事は直ぐにわかった。渋々ヘッドレストを被って、視線をイーグルに向ける。
「…大丈夫なんだろうな…。」
「大丈夫です。」
 きっぱりと言い切るアタリが妖しい。造っていないが、操作しているのは結構粗忽者のイーグルだと知っているランティスは眉間に皺を寄せている。
 これがジェオの操作だったのなら、身を任せるのも厭わないだろうが。
 何だかとんでもない事になったよな〜と内心溜息を吐いてフェリオは樹の根元に座って瞼を閉じた。

 ◆ ◆ ◆

「今、にやけましたね。」
「本当ですわね。」
 フェリオの寝顔を覗き込みつつ、風がふふっと微笑む。
 被っているヘッドレストからコードで繋がっている部分はいたってシンプルだ。
操作パネルとおぼしき部分も簡単なタッチパネルで、最初に一度だけ操作すれば良いらしい。
 流石ザスのお手製。効率的な機械だ。
「フェリオはどんな夢をご覧になっているんですか?」
 小首を傾げた風に、自慢げに話し出したイーグルが(あれ)と小さく声を漏らす。そして、笑顔で頭を掻きながら風を見る。
「すみません。さっきの設定のままだったんで、ランティスとヒカルがらぶらぶの夢でした。」
「まぁ。」
 目をパチパチとさせた風は、それでも特に驚いた様子もない。それよりも、いままで吾関せずを貫いていたランティスの表情がにわかに険しさを増した。
「…なんだと…!ヒカルと!?」
「ええ、貴方に被せようと思ってたんでその設定でした。」
 あははは〜と軽く笑うイーグルに、欠片の悪気も見つけられない。ランティスの(ヒカルとデートした奴殺す)オーラが顔面に吹き付けられても動じる事もない。
 そして、嗚呼とポンと手を叩く。
 鬼の形相で睨むランティスはスルーして風へと向き直った。
「すみません、フウさん。他の方とらぶらぶなんて。」
「少しばかり困りますけど、光さんとのデートでも楽しそうなので良かったですわ。」
 しかし、風が答えた刹那、フェリオの眉間がぐっと寄った。
「あれ?」
「あら?」
 見る間に顔色が悪くなり、あわあわと唇が戦慄く。
「何事だ?」
 流石のランティスも怪訝な表情に変わり、風がフェリオの顔を覗き込んだ。何事が寝言を告げているが、よく聞き取れない。
「どうしました? フェリオ?」  
 肩を揺すれば、ビクンと大きく震える。
風は思い切って、彼からヘッドレストを剥ぎ取った。途端、尋常でない叫び声と共に覚醒したフェリオは覗き込んでいた風と衝突しそうになる。
「きゃっ!!」
「!?」
 フェリオは慌てて彼女を抱き締め、ぶつかるのを避けた。パサリとヘッドレストが地面に落ちる。
「…あれ…なんで、俺…?」
 息を吐くと同時に前髪を掻き上げれば、じっとりと汗を掻いている事に彼自身も驚いた様子だ。
 瞠目しているフェリオに、風は心配そうに眉を落として話し掛ける。
「随分と魘されていらっしゃった様子でしたが、どうなさったんですか?
悪い夢をご覧に?」
「…よく覚えていない…けど、最初は悪くはなかった、お前やウミが出てきて、それで…。」
 そこでフェリオは口籠り、腕を組んで呻り出す。要するに思い出したくもない悪い夢だったという事ではないか、と風は解釈して苦笑いをした。
「駄目ですよ、フウさん。急に外しちゃあ。」
 にこにこと悪い気のない笑みがこちらへ向けられた。
「でも、良い結果は出なかったようですわよ?」
 呻り続けるフェリオを見て、イーグルも若干の罪悪感は湧いたのだろう。後頭部を掻きながらあははと笑う。
「駄目でしたか?」
「だから、止めておけと言ったんだ。」
 側の樹に凭れ係り、腕組みをしていたランティスの声に、フェリオの体がビクリと跳ねる。
「フェリオ?」
 顔色を変えたフェリオに、風は小首を傾げた。
「い、いや、なんでだか…その、震えが…。」
「どうした?」
 王子と、ランティスに言われて、フェリオは完全に震え上がる。よくわからないが、体が恐怖を訴える。本能のままに意識は逃げだす事を選択した。
 あたふたと風の手を引き逃げだすフェリオを見遣ってから、ランティスはイーグルを見下ろした。
「…お前、何をした?」
 ふとパネルを見たイーグルは再び頭を掻いた。
「フウさんに使うつもりで、設定が(女の子)になってたみたいですね。」
 
 ランティスとのらぶらぶデートの真相や如何に!?
 
「あははは〜。」
 悪気なく笑うイーグルと眉間の皺を増やすランティスだけが庭園に残される。
 そして、見るに見かねたクレフに諭されるまで悪魔の誘い(イーグルの実験)は続き、被害者が続出したのは言うまでもない。


 酷い…。今度もう少しマシなの書きます(汗


お題配布:確かに恋だった
content/