ようこそ 光編 「実は兄様たちに紹介したい人がいるんだ。」 そらきた。と優・翔の両兄は顔を見合わせた。 目の中に入れても痛くない末妹もそろそろお年頃。 一時期酷く沈み込んでいて、何かあったのかと心配していた…が、しかし。 その時期を過ぎると妹の様子は劇変。蕾が叙々に可憐な花びらを広げていくかのように綺麗になったのだ! 『これは、恋!』 審判が下された事実は両兄を打ちのめさした。それだけでは飽きたらず、電柱の影から見ていたような神が、留めを差す為の刺客を妹−光−が連れてきたのだ。 秋葉原のコスプレも裸足で逃げ出す重厚さの甲冑を身に纏った黒髪の大男。光と並ぶと美女と野獣の例えがぴったりだ!と優は毒づいた。 「職業はセフィーロの魔法剣士なんだ。」 にっこり笑った妹は、まさしく天然。 そんな説明で納得する奴がどこにいる! 「そうですか、わざわざ遠い所からおいで頂きまして。」 ここにいた!!! 普通に頭を下げた覚の対応もさることながら、そのまま深々と玄関で頭を下げた相手もなかなかのもの。にこにこと笑って長兄は問い掛けた。 「お名前は?」 「ランティスって言うんだ。」 光は頬を染め、その男の方を向くとにっこりと笑う。「ね。」 無駄にでかい男も、微笑み返す。二人の間に漂うラブラブムードに、優・翔両名のボルテージは上がっていく。 「やっぱり。日本の方じゃないと思ったんですよ。それで、今日は何のご用事ですか?」 「光と結婚したい。」 一瞬の沈黙。しかし覚は何事もなかったかのようにこう続けた。 「成る程。では立ち話もなんですから…」 「ちょっと待ったぁあああ!!!!」 柱の片隅(左右)から見ていた優と翔が勢い良く飛び出すと、ランティスを見上げながら唾を飛ばして叫びだした。(…ということは、唾は自分にかかっている。) 「何が結婚だぁああ!!結婚つうのは、出会いって恋愛してモメてプロポーズ、も一回モメてからやっとするものだぁああ!!!(C遠藤さん)」 「つうか、止めろ!覚兄!!」 「ああ、そうですね。申し遅れました。私が一番上の兄で獅堂覚と言います。こっちが、弟の優と翔です。」 「はじめまして。」 「こちらこそ、妹がお世話になっております。」 深々とお辞儀をしたランティスに、普段からの躾がものを言い優・翔も正座で両手をついてお辞儀をしてしまう。しかし、はっと気付くと、両手に握り拳を造って仰け反った。 「違うっっ!!!」 号泣しながら、兄に迫る二人を「兄様達はとても仲良しなんだvv」と言う光にランティスはコクリと頷いた。 「そこも、違うっっ!!!」 あちこちにツッコミを入れる二人は忙しい。 「光と付き合いたい奴は、俺達三兄弟を倒してからと前世の時から決まっている!!」 やる気まんまんの優と翔の後ろで覚は楽しそうに笑っていた。 「…いやあ、やはりお強いですね。」 一本取られた後に、覚が感嘆の溜息をついた。 長兄が負けるのを初めて見た光も、目を丸くしてランティスを見ている。残りの二人は、道場の隅っこで生ごみと化していた。 「お前も強い…やはり光の兄だな…。」 借りていた竹刀を覚に渡しながらランティスが言う。 「私達三兄弟を倒す。問題ありませんね。」 覚はそう言うとひょいと日記を取り出した。そうして、それを二人に渡すと微笑む。 「良かったですね。交換日記をする権利が得られましたよ。」 「交換日記?」 小首を傾げる光、ランティスはなんの事だかさっぱりわかってはいない。 長兄はにこにこしながら、二人の顔をみて説明をする。 「これは、二人でする初めての儀式なんですよ。光は新たな一歩を踏み出したんですね。」 「そうか〜ありがとう兄様vv良かったね。ランティス。」 「ああ。」 喜ぶ二人は、お互いの国の文字が読めない事をまだ知らない…。 〜Fin
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