ACT.11新たな絆 セフィーロ城の何処に当たるのは検討も付かないが開けた森の中には空が見えるほど広い空間があった。岩場を背にした泉には滾々と水が湧いている。 きっと湧きだした水が長い年月を掛けて岩を削り取ったのだろう。地面から生えている岩はまるで巨大な龍の水飲み場のような形だ。けれど、水のうねりまでもが見える透き通った水面からも、その流れの源流も流れいく先もわからない。 まるで、森によって断絶された異空間。 「綺麗ですわね…。」 ポツリとフウが呟くのが聞こえて、何となく頷き返したもののウミの心は此処に在らずだ。それ以上話し掛けてくる事など無いフウも何処か虚ろで普段の様な姿ではない。 そうして、普段ならば無邪気にはしゃいでいるだろうヒカルも大人しい。 本当は凄く綺麗な光景なんだろうな…。 今自分の瞳に写っているものに感情がついて行くことが出来ずに、ウミはただ視線を前に向けた。冷えていた心と違い身体は奇妙に高ぶっていた。 心臓の鼓動がやけに耳につく。 生まれて初めて戦ったからなのか、それとも魔法を身体に宿した為なのかウミには理由を特定することは出来なかった。 「ウミ。」 何度か呼ばれていたのだろう。 振り返ったウミを見つめるクレフの瞳がそう告げていたような気がした。根拠などどこにも無かったが、彼はずっと自分を−自分だけを−見つめてくれていた、そうウミには思えたのだ。 そんな事を考えてしまい。ウミの頬を自然と赤みを増した。 クレフの視線の中で、己は一体何をしていたのだろう。何かおかしな事をしてはいなかっただろうか? 気恥ずかしさは、ぶっきらぼうな態度になってクレフへと返された。 「な…何クレフ。」 「…そういうものだ。」 「だから、何がよ。」 唐突なもの言いに、一瞬苛ついたもののウミはクレフの真意にすぐに気付いた。 今の身体と心の有様を示しているのだろう。 「気持ちを抑えるな。その衝動は馴れていくしかないものだ。 私も初めて魔法を携え人を殺めた時は、幾日も眠る事が出来なかった。」 ポツリと呟く声。 細められた淡い色の瞳は、ウミの知らない感情が幾つも封じ込められているに違い無かった。 「貴方が…?」 「誰もがそうだ。」 躊躇い無く伸ばされる指先がウミの頬に触れる。 細く冷えた指先。 「そんな想いを幾つも積み重ねて私は此処に立っているのだ。導師などと呼ばれても所詮…。」 辛さは同じだ…。 クレフだって人間なのだ。辛さも悲しみも心の中にあるはず。 なのに、最高位の魔導師と呼ばれる強さ故にか、その人間として当たり前にあるだろう感情にすら気付かれる事はない。 〜To Be Continued
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