クレフ×海(OVA)※ちょっと大人向け 天井まである大きな窓。 常は、全開にして復興に向かうセフィーロの風景を眺めている時間。けれど、遮光カーテンは締まっても、内側に付けられたレースのそれは未だ窓全体を覆っていた。 刺繍を通して降り注ぐ、朝の柔らかな光がベッドを照らす。流れるような緩いカーブを描いた青い髪が、ベッド全体を覆うシーツに散っていた。 すんなりと長い手と脚は、女性らしい曲線だけを隠してアッパーシーツから伸び、綺麗な横顔は折り曲げられた腕に乗っている。上に乗っていたライナーは彼女の寝相の為か、それとも昨夜の行為のせいか、ベッドの上から床へと落とされていた。 クレフは椅子の背凭れに掛けておいたガウンを着ると、それを拾い上げて横のテーブルに置く。 横目で見る海の表情は淡い翳りを見せ、柔らかい。 綺麗だと純粋に思い、クレフは誰に聞かせるでもなくコホンと咳払いをした。感情が表面に浮かぶなど殆どないことだ。役職上、感情に振り回されるようでは務まらないのだから仕方がないが、フェリオに言わせれば(仏頂面)だなどと評される。 どんな顔をして女を口説くのか拝見してみたいよ。 酒席の上でだったが、フェリオはそう言いクレフを揶揄したものだ。 「お前の行動が率直すぎるだけだ。少しは学んで欲しいと私が言いたいよ。」 惚れた女の為になら、異世界に飛び込む事すら厭わない友人に対して小言のように呟く。眉間に寄った皺は、ふと目に入った海の下着で緩んだ。 異世界の着衣の名などクレフにはわからない。 けれど、それを纏う海を腕に抱き、肩にかかる紐を下ろしながら指先で触れる彼女の肌や、留め金を外した途端に豊に開放される胸元…妙に喉が乾く感覚に、クレフは焦りを感じた。 まるで、若造だ。彼女が身につけているものだけで、胸が高鳴るなどと。 ドクドクと早い鼓動が尚のこと、クレフから冷静さを奪っていく。 視線は、眠る海に戻された。 未だに健やかな眠りについている彼女の横顔にどうしても触れたくなる。サラサラとした手触りの良い髪をすくい上げれば、指の間からこぼれ落ちていく。 悪戯めいて、するりと腕から逃げていく彼女そのものだとクレフは思う。もっと、しかりと確かなものが欲しい。 海の眠りを妨げてはいけないと気遣う思いはありつつも、指先が止まらない。 髪を撫でつけていれば、海の瞳がゆっくりと開いた。 潤んだ碧眼が彷徨う先に見とれていると、クレフと呼ばれた。 「すまない、目覚めさせてしまったな。」 「ううん、いいのよ。クレフは仕事ですものね。」 長い睫を閉じ、シーツで胸元を隠すように上体を起こす仕草が気怠い。すと引き寄せる脚が、シーツを掻く。 「私はあっちに戻ってもお休みだから気にしないでね。帰りだって、クレフが手が放せないなら、フェリオをこき使っちゃうわ、風には悪いけど。」 欲が己を律するのを拒むのがわかる。 本意ではない。けれど不本意でもない言葉が口を滑る。 「大丈夫だ、私が送ろう。」 パチパチッと瞬きをして、海は驚いた表情を見せた。 「でも、クレフは今仕事なんでしょ?」 「いや、だからその、帰る時間をもう少しだけ伸ばす訳にはいかないか?」 自分が口走った言葉の意味に、後で気付きクレフは慌てて言葉を付け加える。 「その疲れているようで心配だからだ。」 コホンと小さく咳払いをするれば、目を丸くしていた海の表情が笑顔に変わった。「ありがとう、クレフ。そうするわ。」 にこりと微笑んで、海はもう一度ベッドに身を預ける。無造作に身を落とした海に驚き、覗き込んだクレフを上目使いで眺めてから、こう告げた。 「ねぇ、もう少し側にいて。」 人を成長させる恋とやら (そんなものは出来そうもない) 強請られるままに、彼女を抱き締める己はただ堕ちているだけだろう。 お題配布:確かに恋だった content/ |