優しい目


 玄関で睨んでいる桃矢に、小狼も挑戦的な目を向ける。
 二人の身長差は年々減り、桃矢も小狼も角度を少し傾けるだけで、視線が交差するようになっていた。しかし、今日は玄関の下にいる小狼を上にいる桃矢が見下ろしている。小狼の小学校時代の二人の身長差のように。

(何しにきやがった。)と桃矢の目が言う。
(さくらを迎えにきたんだよ。)と小狼の目が答える。
(なに!?デートか!?ゆるさんぞ!!どうしても行きたくば、門限は四時だ!!)
(てか、もう四時だろう!!グループ活動で、調べモノに行くだけだ!それに二人きりじゃない。大道寺達もいる。)
 ある意味器用に目だけで会話を交わす二人の姿に、階段を下りてきたさくらは呆れた。

 何年たっても、二人は仲が悪い。

 と言うよりも、小狼が正式にさくらとお付き合いを初めてから、小狼が木之本家に訪れる回数は確実に増えた。  それによって、二人が顔を合わせる回数は数学で例えるなら正比例。
 そして、二人の機嫌は反比例といった状態。
 数学が苦手なさくらでも、それ位の公式は理解できた。

「もう、お兄ちゃんはどうして小狼くんに意地悪するの!?」
 二人の間に割って入って、下駄箱から自分の靴を取り出す。
「今日は、学校のレポートだからってボードにも書いてあったでしょう?」
「怪獣の字は読めない。」
 眉間に皺をよせて渋い顔をしている兄の姿に、さくらは再度溜息をついた。



〜To Be Continued




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