魔法少女


さくらが呟く。
「遅いなぁ。」
「もう少しお待ちしましょう。私もお付き合い致しますから。」
 両手を膝の上に丁寧に重ねて椅子に座っている知世はそう言った後に、こう続けた。 「とは言っても、暇ですわね。しりとりでも致しませんか?」

「…し。」
「しかく。」
「くま。」
「魔法少女。」
 くすっと笑った知世に、(えっ)とさくらが言葉を詰まらせた。
「それって私の事だよね。」
「はい。」
 人差指を自分に向けて、知世を見つめさくらは不思議そうな顔をした。
「しりとりになりませんか?」
 答えた知世にさくらは両手と頭をブンブンと振る。結わえられた左右の髪が元気よくその後に続いた。
「ううん。大丈夫だよ。でも…。」
 一般的なしりとりに使用されるほどの常用言葉とは思えないよ。とさくらは、指を頬にあてトホホのポーズをとった。
「そんな事ありませんわ。」
「え?」
 きょとんと自分を見るさくらに微笑みながら知世はこう続けた。
「さくらちゃんは、立派な魔法少女ですから。私にとって魔法少女は普通で大好きな言葉ですわ。」
 それは、どんな時でも変らず自分を助けてくれた知世ならでは言葉。さくらは、輝くような笑顔を見せる。
「知世ちゃんが応援してくれるから、私は魔法少女でいられるんだよ。ありがとう知世ちゃん。」
「いいえ。さくらちゃんがいつも頑張っていらっしゃるからですわ。さぁ、次はさくらちゃんの番ですわよ。まほうしょうじょ…。ですから次は『じょ』か『よ』ですね。」
「ええっと、じょだね。じょ…うん今の気持ちを言うね。『上機嫌』!!」
  「…終ってしまいましたわね。」
「ほええ〜!?」
 くすくすっと知世が笑う。足音が近づく。
「でも大丈夫ですわ。ほら、いらしたようですよ。」



〜fin



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