肌の露出が激しい衣装を身に纏った女性が、ふわりと身を躍らせる。
腰まで伸びた長い黒髪が風に舞った。

3児の母様


「…本当に、子供ね。」
 唇を小指の先で弄る仕草は艶があった。けれど、その美貌には毒が垣間見える。
フウは眉を歪めた。
「どちらさまですか?」
「私は(魔導士のアルシオーネ)魔王の関係者そう言えば、用向きがわかるかしら?」
 胸元を押し上げる仕草で腕を組み、フェリオを見て目を眇めた。そして、ギリと唇を噛みしめ、睨みつける。
「エメロードの…弟…。」
 その言葉に、フェリオが息を飲む。一瞬防御を忘れ、無防備に相手に詰め寄った。
「お前が姉上を攫ったのか!?」
「…そう貴方、ザガートに逢ったのね。」
 肯定の言葉こそ出しはしなかったけれど、アルシオーネの様子はフェリオの問いに答えていた。
「ねぇ、教えてザガートは何処にいるの?」
 形相を変えたアルシオーネは、フェリオに近付くと長い爪で顎を撫で上げる。
「決してエメロードなんかに渡さない…。」
「ふざけるな…!!!」
 斜めに叩き付ける刃をひらりと交わし、アルシオーネは高く笑う。
彼女に向かい、フウは風の刃を叩き付けた。 
 けれど、魔法の腕は彼女が勝っているらしく、切り裂く風の威力はアルシオーネの髪の一筋も傷つける事が叶わない。
 余裕の笑みを浮かべるアルシオーネに今度はフウが問いかけた。
「魔王がフェリオのお姉様にどんな用事があるとおっしゃるのですか!」
 冷ややかなフウの声に、アルシオーネはピクリと眉を上げた。けれど、ふふふと怪しく笑う。
「アナタ達は本当に何も知らないのね。」
 そして、アルシオーネは高く腕を上げる。空気が一瞬にして冷え、幾つもの氷の刃が空中に生まれていた。
「真実を知るよりも此処で死んだ方がいいかもしれないわよ?」
 フウは剣をアルシオーネに向かって突き出した。同じく剣を構えたフェリオが、フウに問いかけた。
「…どうする?」


崖へ向かう
橋へ向かう
戦う