フェリオの声に、エメロードは息を飲んだ。 「ここに来るまでに、義兄上に逢ったよ。」 「あれは姉上がしたんだろ? 姉上だって、義兄上を手に掛けた事を他人のせいにすることなんて出来はしないはずだ…。 誰かのせいになんて出来ないだろ?」 「そうね。」 エメロードは睫毛を伏せ、しかし微笑を唇にのせる。 「さあ、いらっしゃいフェリオ。相手をしてあげるわ。どれほどに強くなったのか、どうか私に見せて頂戴。」 エメロードに即され、佇む姉に剣を構える。エメロードの手にも剣が握られていた。 交え合う硬質な音が洞窟に響いたのち、二人は後方へと距離をとった。 「強くなったわね。まだまだ、甘いけれど。」 酷く優しげな笑みを浮かべた姉に、フェリオは一瞬顔を歪め、泣き笑いに近い表情を浮かべる。 「強くもなるさ。姉上を守りたいと願って出た旅なんだからさ。」 そして、フェリオはエメロードを真っ直ぐに見つめる。踏み込むタイミングを計りながら、ただ声を張った。 「俺は姉上が大好きだったんだ!こんな事…っ俺は絶対受け入れない!!!」 咆哮に似た叫びと共に放つ剣圧に巻き込まれ、エメロードは体勢を崩す。その隙を見逃す事なく、フェリオは彼女の首元へ剣を突きつけた。そうして、言い放つ。 「俺は、自分の願いから逃げはしない。」 next |