「待ちや!」
 まさに、飛びかかろうとしたアルシオーネの前に、カルディナが立ち塞がる。一瞬、眉間に皺を寄せ、そしてアルシオーネは笑った。

「あら、どうしたのかしら。」

 カルディナは、ダガーを構え声を張った。

「アンタがラファーガを殺ったいう話、聞いたんやけど?」
「まさか。」
 間髪入れずにそう答え、アルシオーネはフウとフェリオを指示す。
「あの二人に決まっているじゃないの。私を疑うなんて酷い話ね。」
「嘘ついたかてわかってるんやで、ある人がそう教えてくれはったわ。うちを助けようとしたあの人をアンタが始末したってな。」
 余裕の表情を豹変させ、アルシオーネはカルディナを睨み付けた。
「そう、わかってしまったのなら仕方ないわね。私の望みを妨げようとしたから排除したまでよ。
 でも、ロクな攻撃も出来ない貴方がどうするというのかしら?私に幻惑なんて効かないわよ。」
 高笑いをするアルシオーネに向かってカルディナは身を躍らせる。しかし、アルシオーネは身を交わし、反対にカルディナに「氷流切刃」を突き刺した。
 体中に裂傷を負い、カルディナはアルシオーネの脇腹にダガーの刃を喰いこませた。
「許さへんで、よくもうちのラファーガを…。」
 アルシオーネの声が(ザガートを呼び)ふたりの体が同時に崩れ落ちるまで、フウとフェリオは声も出ぬまま見守っていた。近づくその肢体に命はない。

「…なんて事でしょう…。」

 自分らが手を下したわけではなかった。寧ろ、止められなかったというべきか、フウの顔が泣きそうに歪む。
「魔王を、倒しましょう。何が…あっても…。」
 ふたりに手向けられたものだったのか、それともフウの決意だったのか。
扉に向かって歩き出すフウの背中を、フェリオは無言で追った。
   


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