「もう、戦う理由はありませんわ。」
 フウはそう告げると、階段を上り始める。
「お二人供に、決着はついたはずではありませんか?」
 アルシオーネ、カルディナその両方を取り合う事なく、フウは階段を上り続ける。それを追ったフェリオは、一瞬振り返って笑った。
「魔王は俺とフウは倒す。お前達はさっさと立ち去った方が身の為だぞ。」
 そして、天上へとふたりは姿を消していった。
 
「仕方ないわね。」

 アルシオーネは、そう告げると鍵束をカルディナに放って寄越す。
 水色の瞳を大きく見開いたカルディナは、アルシオーネと鍵を何度も見遣る。
「これ?」
「あの生真面目男が監禁されている場所への鍵よ。さっさと連れて逃げなさい。」
 アルシオーネは、馬鹿馬鹿しいとばかりの格好でくるりと背中を向けた。
「まったく私は何をしていたのかしら。」
「おおきにな、アルシオーネ。」
 カルディナは胸元でギュッと鍵を握りしめる。
「ザガートはんは残念やったけど、男は星の数ほどや。アンタほどの美人やったら、例えおばさんやったとしても、まだまだいけると思うわ。」
「おばさんは余計よ。」
 腕組みをしてカルディナを睨み付け、それでもアルシオーネの瞳は満足そうに笑っていた。    


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