「フウの勝ちじゃ!」

 暫くフウとアルシオーネを見比べていたアスカは、高らかにそう宣言した。
(特に何の勝負もしていなかった事を付け加えておきたい。)
鼻の穴を大きく膨らませる彼女に、誰も異議を唱える事が出来ないのは、彼女に勝負の行方をまかせてしまった故だ。
 あらあら、とフウは頬に手を当てて小首を傾げた。
苦虫をつぶした表情のアルシオーネに、微笑みかける。
「なんだか、勝ちのようですわ。」
「こんなの勝負なんて言わないわよ-------!!!!!」
 そう叫んだ彼女の台詞は全く間違っていない。これはれっきとした依怙贔屓というものだろう。

「覚えてらっしゃい!!!」

 捨て台詞を吐き、アルシオーネは店を飛び出した。正確には飛び出そうとした彼女をフウが引き止める。
「お待ちください。」
「何よ、これ以上私に恥をかかせようっていうの!?」

「魔王の住む場所について、教えて頂きたいのですわ。負けたんですから当然ですわよね?」
 にこりと微笑むフウに、アルシオーネはぐっと唇を噛みしめた。



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