先を急いでいたふたりの前に人影が現れる。 
「逃がさないわよ。」
 両腕を胸元で組み、豊かな乳房を押し上げる格好でアルシオーネは赤い唇を持ち上げる。
 ゲゲッと呻いたフェリオをよそに、フウは会釈を返した。
「待ち伏せですか?ご苦労様です。」
「お前、よく冷静に対応出来るな。俺なんか、魔物と出くわした方が何百倍マシな気がするってのに。」
「そんな事おっしゃるものではありませんわ。
 この広いセフィーロの中で、一生懸命私達のお尻を金魚の糞みたいに追っかけて下さっているのですもの。敬意は払わないといけませんわよ。」
 言葉遣いはともかく、内容的にはかなり辛辣だ。アルシオーネの眉間にピクリと皺が寄る。
「あら、どうかなさいました?」
 口元に指先を当てて、フウは小首を傾げた。

「ふざけるんじゃないわよ、小娘ども!」


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