「貴方にお姉様を殺めさせる訳には参りませんわ。私が勇者です。」 フウはフェリオの剣を自らの手で押しとどめさせ、姉弟の間に身を置くと剣を構える。 「お下がりになって下さい。」 「フウ…。」 有無を許さない語意にフェリオの瞳は迷い淀む。けれど、フウはその迷いを許す事はない。 一瞥しただけのフウに、フェリオは見つめあうふたりから距離を置いた。 「ザガートさんは、貴方を助けてほしいとおっしゃっていらっしゃいましたわ。」 エメロードは胸元に両手を重ねて、声を漏らす。 「哀れな、ザガート…。」 彼女の胸に湧きあがったものが、後悔だったのか嘲笑だったのか、フウは最後まで聞くことは出来なかった。 主を失った魔窟は、屍を抱いたまま炎に包まれていた。 力を使い果たし眠っているフウを抱き上げて、フェリオはその場を後にする。己の為に姉を殺させてしまった後悔は一生己を縛り続けるだろうとフェリオは想う。 それでも、腕の中の少女が愛おしいと感じる自分の不甲斐無さに、フェリオは苦笑するしか無かった。 〜Fin |