目の前には、だだっ広い草原があった。
少し距離はあるけれど、村落の屋根が垣根のようになった木々から垣間見え、森の中では無い証拠に、頭上にあるのは覆い被さるほどの威圧感がある葉ではなく、どこまでも高く青い空だ。
 
「沈黙の森でも、なかなか良い経験はさせて頂きましたが、こうしているとほっと致します。」
「…奇遇だな、俺もほっとした。」
 森では散々な目にあったのだけれど、こうして顔を見合わせてると笑顔になるのが不思議なものだ。
 フェリオは、草原を凪ぐ風に揺れる亜麻色の髪を眩しいものを見るように瞳を細めた。それに気付いたフウが、僅かに頬を染めた。
「何ですの?私の顔に、何かついておりますでしょうか?」
「い〜や。

なかなかの大物の勇者様に行きついたと思って感慨を深めていたところだ。」 「私などまだまだ若輩者ですわ。」
 ふふふと笑う。

3児の母様


「フェリオさんの剣の腕前も大したものでしたわ。私ひとりでは、とても森は抜け出せなかったと思っております。」
「おだてたって何も出ないぜ。」
 そう告げるフェリオの表情もまんざらではない。森を抜け出せた事で、絆に似た信頼関係がふたりの間に生まれているのを感じた。
   


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