「これじゃ廊下で寝た方がマシだ…。」 散らかり放題の客室に、フェリオは顔を引きつらせる。 どの部屋もおもちゃ箱をひっくり返したような状態で、比較的綺麗に見えた部屋を選んでみたものの、実をいうと目糞鼻糞の差でしかない。 脚の踏み場もないほど床にはモノが散らかり、無事なところと言えばベッドの上だけ。それだとて、床よりはマシな程度だ。 「勇者は此処で泊まるという慣習です。セオリーを踏むのも勇者のお仕事ですわよね。」 流石に彼女も思うところはあるのだろう。溜息をつき、頬に手を当てて思案していた。 そして、ハッと気付いた様子でフェリオを見る。 ![]() 「貴方も此処でお休みになられるのですか?」 「…この部屋が一番マシだろ?」 何を今更とベッドの埃を払うフェリオに、フウは困りましたわと首を傾げた。 「私、お父様以外の男性と床を共にした事がございませんわ。」 …。 「これって私、貞操の危機なんでしょうか?」 真顔で聞いてくるフウに、赤面したのはフェリオの方だ。 手したシーツを取り落とし、思わずフウに詰め寄った。 ![]() →「襲って欲しいのか?」 →「お前なんか趣味じゃねえ!!」 →「…廊下で寝る。」 |