ついさっき結成されたばかりでも、固い絆で結ばれている(はず)の勇者フウと従者のフェリオ。
 二人は光を遮る深い森の木々が魔法をも拒み、人々の畏怖を集めている場所−沈黙の森−で彷徨って…ではなく、道無き道を歩んでいた。
「あら…?」
 ふいに、フウは脚を止めると、背後のフェリオに微笑んだ。
 ゲッと顔歪める間こそあれ、前にいたはずの勇者は自分よりずっと離れた大樹に身を隠し、目の前には一つ目の化け物が涎を垂らしている。
「ファイトですわ!」
 応援のコールがむなしく森に響く。
「ふざけるな…!!」
 フェリオの叫びと共に、一つ目の化け物が地響きを上げて倒れ込む。断末魔の痙攣をしている様子にフウは拍手を贈った。
 彼女は魔物の落としたアイテムを拾う事に抜かりはない。余談だが、こんな森に踏む込むものなど少ないので、魔物から奪えるアイテムは実に高額で売れるのだ。
「それにしても全ての魔物を一刀両断で切り捨ててお仕舞になるなんて、素晴らしいですわね。」
 森に入った当初から常に高見の見物を決め込んでいるフウに疲れはなく、全ての魔物とエンカウントを繰り返すフェリオは満身創痍だ。
「お前も戦えよ!!!!何で俺だけ戦わされてるんだ!!!」

ほたてのほ様


「私勇者ですので、出口に検討もつかない状態で体力を減らす訳には行きませんわ。
 それにお支払いする時給は稼がないと申し訳ありませんから。」
 申し訳ないと口にはしても、フウはにっこり笑顔である。一応はお仕えする相手なのだと我慢を重ねていたものの、流石のフェリオもぷつんと切れた。
「適当な事言ってんじゃない!!!!出口がわからないとか、森の抜け方が無策だったら、無策だと言えよ!!!!!」
 フェリオの罵倒に勇者フウは動じない笑顔のまま、唇に人差し指を当てた。
「まぁ、そんな事ありませんわ。私も色々考えてはおりますわ。
そうですわね…。」

3児の母様




→「人生真っ直ぐ歩けばなんとかなるものですわ。」
→「優秀な従者にお任せしますわ。」
→「取り敢えず、前にいらっしゃる魔物から逃げるべきですね。」