voice is delivered


※あんまりなので捏造に隠して連載してしまうものです。
少女漫画みたいな二人を許せる方のみご覧ください。ぬるいけれどもR指定(笑



 光が眩しくて眼が覚めた。
 窓から降り注ぐ真っ白な光は、遮るカーテンもなく部屋を照らす。
 ピオニーはぼんやりと眺めて、見慣れた私室の天井だと気が付く。
なんだろう、最後に見たものとどうしても結びつかない。記憶が何処か曖昧で…。

「…俺…。」

 声を出すと、やけに掠れて喉がジンジンと痛んだ。
 寝台の周りにいる可愛い奴らが、鳴き声を上げたのが耳に入り、撫でてやろうと体を起こすと掛かっていたシーツの端がスルリと床まで滑り落ちる。素肌に散らされている痕が目に入り、意識は瞬時に覚醒した。

「…っ…。」
 それと同時に目頭が熱くなる。隠すようにベッドの上で蹲った。
 とめどもなく流れる涙の意味がわからない。
 屈辱感もある。抵抗出来なかった情けなさも勿論ある。快楽を享受してしまった自分の弱さに腹も立つ。けれど…。



voice is delivered


 何処が普段と変わっていたのかなんて俺にはわからない。
何十年とつき合って来て、昨日だけが極めて特殊な事をしたのかと問われると、そんな事は無いとはっきり言える。
 しかし、それは自分が感じた事で、相手には違っていたらしい。
射すような紅玉が、犯す如く自分を見つめていた。なんというか…比喩にならないところが、全く笑えない。

 予め準備していたんだろう。あいつらしい、手際の良さ。
 深夜、訪れたジェイドの執務室。面白そうな本を捲っていたら、部屋の持ち主が帰って来た。今思えば、一瞬動揺が見れた気もする。綺麗な緋石が微かに揺れた。でも、俺はいつもの呆れだと、あいつの悪態も聞き流した。
 たわいない会話を交わしてから部屋の角に座り込む。この間、やっと手に入れる事に成功した俺の陣地だ。
 見るとジェイドは手袋を外して机の横に置き、なにやら紙に書き留めていた。それを手に再び扉に向かうと警護兵に渡した。これもいつも通り。
 …いや。
「今日は早いな。」
「調べて欲しい資料がありますので。貴方と違って、私は猫の手も借りたいほどに忙しいんですよ。」  こんな所に出入りして暇人ですねと嫌味を告げる相手に、『ぶうさぎの前足貸すぞ。』と返して、睨まれた。
 その時に普段より靴音が荒々しいと思ったのは確かで(そういう時は、機嫌が悪い)、床に座り込んでいた俺の目の前に、無言で立ったジェイドに若干の不審を感じて顔を上げた。
 片手をポケットに突っ込んでこちらを凝視している。ふと気付く、三割増の美人。
「…お前、眼鏡どうした?」
「壊れると面倒ですので、外しました。」

 は?壊れる?何で?

 感じている疑問をよそに、ジェイドの手が俺の頬に触れた。冷たい、いつにも増して体温を感じない細い指。耳に被さった髪を掻き上げて、顎をすくう。
 それは、ある種の行為を思い出させ、顔が歪むのが自分でもわかった。やめろと言うつもりで顔を上げ…。
「?…ジェ…!」
 アンプルをもう一方の手に持っていると認識した時には、それは口腔の中だった。舌先に痺れを感じる刺激の強い液体。吐き出す間もなく、鼻と口を抑えられる。
 ジェイドの腹を蹴り飛ばして、自由を取り返した時には得体のしれない液体はとっくに腹の中。鳩尾が熱い。「何…飲ませやがった…。」
「直ぐにわかりますよ。」
 何だって…?
 立ち上がろうとした脚に力が入らない。全部が己の意志で動かないし、声も出せない。勿論、身体を支えるなんて、出来るはずもなくて。
「…っ…。」
 倒れた身体は、あっさりとジェイドの腕の中に収まった。


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