書きかけ放置中


月光に照らされる異国の姫君の後ろ姿に、ピオニーはふっと息を漏らす。近づいて行こうかと一瞬思考を巡らせて、足を止めた。
 今、向うのは余りに配慮がなさ過ぎる。
 仲間に見せる強気な態度も、そうでありたいと願っている彼女自身の姿なのだろう。心を揺らされる弱々しさも、誰の目にも触れない場所でしか行われない。
 いや、これはティア嬢にも言える事か…。
 実際、自分の半分に満たない人生しか過ごしていないにも係わらず、その肩に背負うものは重過ぎる。
 そう、あの鮮血も…。

『俺に構うな。』

 歳に似合わぬ眉間の皺を隠そうともしないで、自分に対峙した青年の姿は頑なで、排他的。
「以前ヴァンが言っていた、マルクト皇帝は曲者だとな。」
 一通りの用件を告げ、アッシュはそう付け加えた。ははっと笑って、ピオニーは額に手を当てた。
「成程、マルクト皇帝は曲者…だそうですよ、陛下。」
 隣にいた懐刀が楽しげに復唱する。不遜だとか、尤もらしい事を言いもしないジェイドの方がよっぽど曲者だと思うんだがなぁ。
「褒められていると受け取っておくよ。アッシュ。」
 笑みを崩さないピオニーの顔を一瞥し、ふんと鼻を鳴らし、背を向ける。長く赤い髪が大きく揺れた。
「陛下?」
 ジェイドの声を背中に、ピオニーは王座を下りると炎の如く揺れる緋色を引っ掴んだ。



〜To Be Continued?



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