死霊と皇帝


「今日は何日か知ってるか?」
 部屋の角で頁を繰る皇帝が問う。
「7月27日木曜日です。」
 雑務に追われる大佐は皇帝の言葉を鼻であしらう。
 わざわざ休憩時間でもない今、此処へ脚を運んで聞くという事は、それ自体に意味があるのだろうが、むざむざその『暇つぶし』につき合って差し上げる(一応敬語)言われもない。
「じゃあ、何の日かわかるか?」
「政治を考える日とスイカの日になっております。」
 そう言って、背中越しに相手を観察するが『スイカ』を持っているなどという事でもないらしい。相手も上目使いでチラリとこちらを見上げると、唇を開く。
「じゃあ、誕生石」
「アメジストです。」
 ディストの目がそんな色だが、それがどうという事でも無いようだ。
「じゃあ、誕生花」
「日々草。」
 ジェイドはそこまで答えて、ふっと表情を緩める。滑らかに書き込まれていくペンの音はそのままに。
「……貴方は時々、無駄に可愛いですねぇ。」
「うっさいぞ。お前も無駄に頭がまわりやがる。」
 花の色味に類似して、皇帝の顔が紅潮した。


日々草の花言葉は(生涯の友情)です。


〜fin



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