剣技


「そんな場所だぞ、幾ら大雑把な国王の国だからと言って、見張りの一人も置かないと思うか?」
 ピオニーの言葉に、ルークは彼にからかわれたのだと気付く。
むっとはなるが、相手は一国の王。おまけに少々苦手な相手だ。
 黙ったままで突っ立っていると、すっと相手の手が上がる。ぐしゃぐしゃっと髪の毛を掻き乱しながら、彼は謝罪の言葉を口にした。
にこにこと笑っている。
「悪かったな。そう膨れるな。」
「…いえ…。」
 膨れてなんかいない…そう言いたかったが、それでは益々自分が子供じみてみえるだろう。

 それにしても、変った王様だ。…ルークはそう思う。
 自分の叔父である人物を思い起こせば、肉親でありながらこんな風に接してくる事は無かった。いつも高い所から自分を見下ろし、話掛けてくるし、勿論軽口など聞いてくる事も無い。
威厳に溢れて、近付きがたい相手。それが自分にとっての国王だった。

「此処は、俺の個人的な武器庫なのさ。」
「え…?」
「聞いてなかったのか?此処は俺の趣味で集めてるものや、献上品を置いてる部屋だ。」
「…あの、それは陛下の自室に…?」
 ルークはぶうさぎに囲まれ、床に放り出してあった剣達を思い浮かべた。あれは、確か陛下の趣味で集めていたと言ってはいなかったか?
「あそこにあるのは、特に気に入っているものだけだ。」
「あ〜そうですか…。」
 整然と並べられている品々達と、無造作に置いてあるもの。一体どっちが幸運なのだろう。
「お前、今得物は持ってるな?」
 苦笑いを浮かべるルークに、ピオニーはそう問いかける。
疑問符を頭に浮かべて、腰の剣を示すとピオニーは笑みを浮かべた。
「一手…どうだ?」


 あそこも見た。此処も見た。
軽いパニック状態のガイは、せかせかと廻りを見ながら足早に歩いて行く。左右ばかりを気にして、前を見ていなかった彼が、何かにぶつかるのにさして時間は掛からなかった。
「どうしました、ガイ?」
 その障害物は、さして驚いた風もなく、にこやかに微笑みガイに問い掛けた。
「ジェイド…。」


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