剣技


「ひょっとすっと…。」

 仲間からも逸れた。
 そして、自分が何処にいるのかわからない。

 ルークは、もう一度自分の状況を思い浮かべた。空を仰ぐと、大きな窓から月が見えた。

「あぁ、満月だなぁ…じゃなくて、俺、迷子!?」

 赤面するような状態ではあったが、とにかくこのままではどうにもならない。グランコクマの宮殿…だったか、軍部の方だったかも定かではない場所で、ルークは無い知恵を絞る事にした。

 …が、無駄だった。何も浮かばない。

 せめてガイがいてくれたらとも思うが、それは迷子では無いだろう。
大きく溜め息を付きながら、彼に出来た事と言えば手短な扉を開けてみることだけだった。
「…此処、武器庫…!?」
 開けた扉の中に飾られた剣や弓などが、窓から照らされる青白い光に鈍く輝いて見えた。名のある物も多いのだろう、ルークはついふらっと中に入りこんでしまった。


 その微かな物音に、人影が動く。
「誰だ?」
 聞き覚えのある、低い声にさすがのルークもビクッと身体を竦める。ゆっくりと自分に近付いてくる影は、窓の明かりの下で立ち止まった。
 年若きこの国の最高権力者の姿が、月光に照らされる。

「…陛下…。」
「ん?ルークか…。」
 なんだと言う表情を向けてから、ピオニーは悪戯な笑みを浮かべる。
一瞬、ルークの脳裏に、自分の仲間であり、目の前の人物の親友である男が浮かぶ。
 類は友を呼ぶ。
もちろんそんな格言じみた言葉など、ルークには浮かばないが…。

「我が国の軍事力を計りに来たのか?」
「…と、とんでもない。」
 とんでもない事を言い出され、目を丸くしたルークは、止めてなお頭がクラクラするほどに首を左右に振る。
 黙って眺めていたピオニーは、額に手を当ててくくっと笑い出した


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