女になっちゃった陛下・それから


 ひとまず下着だけは身に纏い、ピオニーは足を、ディストは兵士の足を持ち上げて浴室から運び出した。
 廊下へと続く通路に置くと、ピオニーは両手をふるふると振る。
 ここまでは運ぶのが限界で、まだ余裕の顔をしてるディストよりも非力なのは、どうも気に入らないらしいく、綺麗な眉に皺がよっている。
「なんつーか女ってのは、力が無いもんだなあ。」
「そんな事はありません。理論上は、男女の筋肉に差はないですよ。」
「でも、充分非力さを感じるぞ、俺は。」
「まぁ、強いて云うなら持久力の差はあるかもしれませんね。ただ、皮下脂肪の多い分女性の方が耐久力はあります。」
「…同じじゃねぇじゃねえか。」
 益々、機嫌を損ねてぷうと頬を膨らませたピオニーの横顔を盗み見してディストはクスリと笑う。このなんとも順応性に優れた幼馴染みも大したものだが、悪くない状況ではあると思ったのだ。
 同性だと、どうにも素直になれない相手なのに、異性だと可愛いとさえ思える。
「さて…と。メイドでも呼んでくるか。」
 下着姿で仁王立ちをしているピオニーに、背中から纏いが覆った。
振り返ると、銀髪の将校が苦笑している。
「アスラン…?暫く休暇を取るんじゃなかったのか?」
 不思議そうに小首を傾げるピオニーに、アスランはにこりと笑った。
「目的は達成しましたので。」
「目的?」
 ピオニーはマントの端を、身体の周りに一巡させて胸の横に止める。肩を剥き出しにしたドレスのようにも見えた。アスランは、ピオニーの視線が自分に戻るをまってから跪き、左手に口付けを落とす。 「ジョゼットと陛下の為にラマーズ法をマスターして参りました。
必要とあらば、いつでもお召し下さい。」
 一瞬目を丸くしたピオニーは、にやりと笑う。
「それは、御苦労。けど、俺はまだ妊娠してない。セシル少将は出来たのか?婚姻の儀も済んでないのに、以外とお前は大胆だなぁ〜。」
「いえ、陛下。清らかな彼女の肌には指一本触れてはおりません。
 聖女の如き白い肌と思慮深く貴重な輝石のような瞳は、残念ながら私のものと誓われてはおりませんので。」
「さりげに惚気が凄いぞ、アスラン。」
「恐れいります。」
 くくっと笑うピオニーに平身低頭のままアスランは問い掛ける。
「『死神ディスト』殿がいらっしゃるのは、どうしてでしょうか?」
「ああ、まぁジェイドの代わりみたいなものだ。」
 すっと顔を上げて、アスランはディストを見据えた。「カーティス大佐の代わり…ですか?」
コホン。咳払いをしたのちに、アスランはディストを見据えた。
「では、云わせて頂きますが、陛下をこのような姿で放置するというのはどういう事でしょうか?陛下は、先だって性交渉をなさったばかりです。一説によると、この時期が女性として最も美しく魅惑的。美しくて聡明な婚約者がいる身でありながら、思わず押し倒して私の欲望のままに、突き進みたくなるほど魅力的な陛下をより一層淫猥な姿で放置プレイなさるのはいかがなものかと…。」
 アスランの言葉をディストのわめき声が遮った。
「きぃいいいい!変態ですね!貴方は! それに私は『死神』ではなく美しい『薔薇』です!」
「美しいのは陛下とジョゼットです。貴方ではありません。」
 真顔で返したアスランにディストはきいいと吼えた。


〜To Be Continued?



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