女になっちゃった陛下 結婚式を終えたばかりの新郎新婦が、式を挙げたホテルのベッドにそのまま倒れ込みました。…というシュチエーションで、ジェイドはピオニーを見下ろしていた。 「…なんだよ…。」 自分を組み敷いておきながら何のリアクションも見せないジェイドに、両手でぺちんと頬を叩き、ピオニーは訝しげに声を掛ける。 「ひょっとして、お前実は真性のホモで女相手ではイケテナイチキンって類か?」 「失礼ですね。ガイと一緒にしないで下さい。」 そして、頬に添えられていた手首をやさしく掴んでシーツの上に降ろす。 鎖骨から胸元へ唇でなぞる。「…あっ…な。」 「この状態で、据え膳されて喰わない男が存在するはずありませんよ。」 にこりと笑われ、怒っていいのか喜んでいいのか複雑な表情を浮かべるピオニーにジェイドは表情を崩す。 シーツに散る金髪。控えめな胸と細い腰。女性になっても若干変った美貌と、それこそ変わる事のない強い光を留める蒼穹の瞳。 「ただ、はしゃぎすぎました。」 「は?」 「貴方を手に入れてもいいと、告げられる日がくるなんて思った事もありませんでしたから…。」 ジェイドの言葉に、ピオニーはその瞳を瞬かせる。 「お前…本当に可愛くないジェイドか…?」 くくっと花のように笑う。「可愛すぎるぞ。」 「そんな言葉は、そっくり貴方にお返ししますよ。どうして、あんなものを口にしたんですか?」 うっすらと頬を染め、睨み返してくる。 分かり切った答えですら、相手の唇から出るとまるで違って聞こえる事など、貴方はわかっているのでしょう? 「わかってるんなら、聞くなよ。…お前がいなくなって、寂しかったからに決まってんだろ。」 躊躇いもなく返される言葉が、代え難いと感じる。 決して己の手に入ることなど叶わないと思っていた輝きを、こうして腕のなかに収める喜び。姿が変わっても、欲しい相手に変わりなどない。 「無謀過ぎます。どんな副作用が出たか、予想するだに恐ろしい。それこそ貴方が『泡』にならなくて本当に良かったですよ。」 啄むように口付けを落とすと、ピオニーは長い睫毛に瞳を隠す。 「平気だ。俺は運がいいんだ、こうして無事に王子様を引き止めた。」 「馬鹿な事を…。」 くすぐったさに、身を捩りながら笑う。「これって、ハッピーエンドなのか?」 「さぁ。」 「…ま、いっか…。」 ピオニーはそう呟き、これ以上追求しても仕方のない事象を頭から追い出すことに決めた。ジェイドの胸元に自分の身体を預けて、背中に腕をまわす。 「俺、処女なんだけど…な?。」 「わかっております。姫君の『お初』を頂けるのは光栄ですね。」 金髪を掻き上げ、耳を甘噛みされながら囁かれた言葉に、ピオニーは呆れる。 「は、お前……やっぱ、最低…。」 こうして、順応性に優れたお姫様と王子様(!?)は末永く幸せに暮らしたそうです。 〜fin content/ |