女になっちゃった陛下 旅の間、ピオニーの様子を知る事は出来ない。 ジェイドは、城の中を彷徨きながら皇帝陛下の日常を聞き回った。健康優良児認定間違いなしの様子に、若干の苦笑を交えながら『女性化』の理由を探す。 昨夜も特別に何かをしていた様子もなかったし、確かに彼は、『彼』だった。 しかし、メイドのひとりがそう言えばと言葉を洩らす。 「大佐が旅立たれた次の日に、一度だけ食事を召し上がらなかった日がございました。 お伺いしたら、ちょっと気分が悪いからとおっしゃったので、大事をとって医術師の方に診察して頂いたのですが、異常は無いということでしたので…。」 「…では、その次の食事からは…。」 「普通に召し上がっていらっしゃいました。」 「そうですか…。」 …何かの異変という事なら、どうもそれしか考えられない。何か変なものでも拾って食べなかったか(ぶうさぎ扱い)聞いてみなければなりませんね。ジェイドはそう判断して、今度はピオニーの行方を探した。 「大佐〜〜。どれが、いいと思います?」 探し当てた洋装の店。脚を踏み入れた途端、アニスはジェイドに写真を差し出した。簡易の写真機関でとられた数枚の写真を眺め、ジェイドは呆れた。 「…アニス。白いビキニ姿で謁見などしたら、何処ぞのアイドルの写真機関の撮影会の会場と間違えられてしまいますよ。」 数枚の写真。数枚は普通に女物を着せられたピオニーの姿だったが、残りの数枚はコスプレと見まごう姿のもの。 マルクト軍服(ジェイド仕様) チャイナ服(白地に牡丹の刺繍、スリットは前と後ろ内股見え。) メイド姿 ビキニ 和服(それも襦袢) …。 元が良いだけに、似合っている事は否定できないが、これの何処に『皇族のご身分』に配慮したものがあるというのだろうか。 「これだけの品揃えがあるというのは、素晴らしい店だと思いますが。どうなんですか?アニス。」 えへへ〜〜と笑うアニスは、「だって、陛下何着ても似合うんだもん。」と付け加える。 「おう、ジェイド!」 呼ばれて顔を向けると、下着姿のピオニーが試着室の前で手を振っていた。先程写真で見た水着姿と大差ない、白い上下の下着。丁寧に施された刺繍とレースが良質なものだと判断出来た。…とその側でルークとガイが青い顔で蹲っている。 「どうしました、二人とも?」 「…旦那…。」 鼻を押さえたガイが、青い顔で見上げてくる。目尻に涙が溜まっていた。 「具合でも悪いんですか?」 「…俺…俺さ…俺っ…。」 窮まって言葉を詰まらせるルークも同じ表情。「皆まで言うなルーク、俺も同じだ…。」 「一体どうしたんですか?」 ジェイドの言葉に二人は同時に溜息を付いた。そして、ガイが言葉を続ける。 「…相手があの…あのぶうさぎ陛下だとわかっているのに…つい身体が反応してしまう自分が憎い…。」 「男って奴は…どうしてこう…。」 そして再び溜息。 「二人とも若いなぁ〜。」呑気なピオニーの声が、しょぼくれた二人の背中に追い打ちを掛けた。 content/ next |