indications of put an end 上質な絨毯張りの廊下。足音などするはずもなく、トイレに男が駆け込んで来るまでわからなかった。その男は足をもつらせてルークにのしかかるように倒れ込む。 大人の重さに押しつぶされ、ルークはバタバタと藻掻き、悲鳴を上げた。 「アッシュ〜〜!!」 「どけ、屑がっ!」 アッシュは弟を助けようとして、肩に両手を掛けて仰け反るようにして男の身体を起こそうとした。それを正面から見ていたピオニーは顔色を変える。駆け寄ると、男の上半身に腕を置き、ルークを片手で引っぱり出した。 「アッシュ、ルークと一緒にジェイドにこのことを伝えて来てくれ。」 口は悪いが頭は良い子供達なのだろう。ピオニーの様子が尋常ではないことをすぐに感じ取り、ふたりで手を繋ぎ廊下へと走り出る。 男を再び床に戻し、ピオニーが扉から様子を伺う。部屋へ走り込んでいく幼子の姿を確認し周囲に視線を這わせてた。 廊下には数人の男女。誰もが、マナーの悪い双子を見遣って、不快な表情を露わにしている。しかし、確かな視線が自分に注がれているのをピオニーは感じた。 職業意識のようなものだろうか。 他人の視線を受ける商売をしているせいか、それを察知する能力はあるとピオニーは思っていた。勘にも似たそれに従って、ピオニーはゆっくりと身体を向けた。 → content/ |