indications of put an end


 静まり返った舞台とはうって変わって、その楽屋は蜂の巣をつついたような騒ぎとなっていた。関係各位の方々は全員『原因不明だ』『この劇場始まって以来の出来事だ』と騒ぎ立てていたものの、その中で唯ひとりピオニーは沈黙を守った。
 理由など、とっくに知れている。あの男の仕業に決まっていた。 
 どうしてくれようかと、悶々としてたピオニーは、ノックの音さえ聞き逃す。気付くと両手に白い芍薬の花束を持ったジェイドが、子供を伴って立っていた。
 微笑む姿はまるで花の様に美しい。立てば芍薬…正にその通りだ。
 驚愕に声も出せず、立ち竦むピオニーには構わず、ジェイドはその花束を二つに分けて子供に渡してやった。
 アッシュとルークはピオニーにしゃがむように即し、左右からピオニーの腕に放り込む。小さな口付けも一緒に送る事を忘れない。
「よく分からなかったけど、面白かった。」
「まあ、まあだったな、役者は大根だが。」
 それぞれの感想も個性的だった。両腕の花に顔を埋もれさせピオニーは溜息を付く。
「…どういう事だ、ジェイド。」
「貴方が役者だと申しあげたらどうしても、舞台が見たいと言うことで。仕方ないので貸し切らせて頂きました。」
 
 …仕方ない?

 何がどういう風に仕方ないんだ!!
 ぷっつりとキレたピオニーは、花束を間に挟んでジェイドの胸ぐらを掴み上げる。
「やっぱり、お前の仕業かぁあああ!!! 舞台裏は殆どパニックだったんだぞ!!」
「そうですか。まぁ、この子達の安全が第一ですから。」
 取り合わない涼しい顔は、ピオニーの怒りに油を注ぐ。「だからって…!」
 怒髪天を突く勢いのピオニーの服をルークが握った。
「あのね、この間からね。通学途中にタイヤがパンクしたり、学校に泥棒が入ったり変な事ばかりなんだ。それで、ジェイドがこうしてくれたの。」
 (ごめんなさい)ルークの顔にはそう書いてある。
「本当は、こんな人の大勢いるような場所に問題があるのですが、クライアントの要望は極力叶えて差し上げなければなりませんので。」
 ジェイドの言葉に益々しょぼくれていくルークに、ピオニーが折れないはずはない。しゃがみ込み、ルークを視線を合わせるとニコリと笑った。
「見に来てくれて感謝する。俺に出来る事で…なんだけど、何かお礼をしたいんだが、どうかな?」
 ピオニーの申し出に、ルークの顔は満面の笑みを浮かべた。





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