indications of put an end


 駐車場に止められていた高級車の扉は全て開けられ、煙のようなものが車中から沸き上がっている。後部座席からずり落ちた体制のまま、アッシュは激しく咳き込んでいた。運転席に座っている男が、額に血を流し、動かない様子にピオニーは息を飲む。「これは…。」
「アッシュ…!」
 駆け寄ったジェイドは、アッシュの背中をさすりながら、周囲を見回した。
「どうしました。」
「…鍵穴から、煙が入って…来て…。」
 咳の合間に続けられる言葉にジェイドが顔を顰める。足を止めていたピオニーが、あっと声を出して走り出した。
 思いの外、ジェイドの対応が素早かったせいなのだろう。慌てた様子の男は暴れるルークを持て余したのか、道路に落としたところだった。足で背中を抑え込み、服の衿に手を掛ける。
 そこで、ピオニーは追いつき、男の身体に飛びついた。地面に押し倒し、ルークから引き剥がす。後を追っていたジェイドがルークを保護した。
 なおも押さえ込もうとしたピオニーの腹を蹴り上げ、男は再び逃走する。立ち上がり、追跡を続けようとしたピオニーの腕をジェイドが制止する。
「ルークは無事です。深追いをする必要はありません。」
「…そ、そうか。」
 口元を袖で拭って、ピオニーは息を吐いた。
 未だ、げほげほと咳をするアッシュが、おぼつかない足取りで近付いてくるとルークを見て、ほっと息を吐く。
「ルーク。平気か?」
 兄の問い掛けに、ルークは震えながらもコクンと頷いた。再びアッシュは激しく咳き込み、その様子にジェイドは眉を潜めた。
「車がやられていますので此処を移動した方がいいのですが、その様子だと歩けませんね。」
 再び地面に、手をつき咳き込むアッシュの背中をピオニーがさすってやる。
「これは、有毒性のものなのか?」
「恐らく違います。暫く休めばもとに戻るとは思いますが。」
 先程の男が仲間を連れて戻ってくる可能性は充分にあるとジェイドは言っている。ジェイドの協力者が殺されている以上、彼はひとりで双子を守らなければならないのだ。それは、かなり困難な事ではないのだろうか。
「何処かに隠れて、俺はアッシュとお前を待つ。それでいいか?」
 狙われているのはルークだ。この子を早く安全な場所へ移してやった方が良い。ジェイドも同じだったのだろう。すんなりとピオニーの意見に賛同した。

「直ぐに戻ります。絶対に無茶をしてはいけませんよ。」





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