indications of put an end


「やっと、目が覚めましたね。」
 
 背中から降ってきた声に、ゆっくりと首を後ろへ曲げる。
 腕を組み呆れた表情のジェイドが、ベッドの上で正座しているピオニーを見下ろしていた。
「ジェイド…。」
 すと伸ばされた白い指先が、僅かに頬を掠めて額を抑える。ジェイドはほっと笑みを浮かべた。
 見たこともないような、綺麗な笑みにピオニーは一瞬だけ我を忘れた。
「どうやら熱も下がったようです。体調はいかがですか?」
「え…ね、熱?」
「かなり酷かったようでしたが、覚えていないんですか?」
「あ、ああ。」
 身体が急に熱くなって、それと共に思考が飛んで…。
 無惨なタキシードを見遣って、ピオニーは自分にゆとりが無かったという事実だけは何とか思い出した。じゃあ、あれは夢。熱に浮かれた悪夢だったのだと、胸を撫で下ろし、ピオニー気の抜けた表情に変わった。見つめる瞳は複雑な色をほんの少し滲ませる。
 しかし、見上げた碧にその色は消えた。
「…すまん。こんなところに来てまで世話かけた。…でだ、世話をかけついでなんだが…。」
 口ごもったピオニーの姿に、ジェイドはクスリと笑う。
「着替えなら用意してありますよ。それとも、ファブレ侯爵への謝罪ですか?」
「両方だ。」
「わかりました。そちらは後日連絡を入れておきます。」
「助かる。」


→送ってもらう
→ひとりで帰る



content/